投げ釣りと言っても、堤防からのチョイ投げから、100m以上も先の魚を狙う遠投投げ釣りなどその釣り方はさまざまです。釣り場の状況や狙いなどで仕掛けもその都度変更しなければなりませんが、今回は遠投用の仕掛けをメインに、色々な投げ釣り仕掛けを紹介していきます。
投げ釣りの魅力紹介
まずは、ウキ釣りやルアー釣りなどでは味わえない投げ釣り独特の魅力について紹介していきます。
投げ釣りは魅力いっぱい!
老若男女問わず、誰でも楽しめる
安定した釣果と美味しい魚が期待できる
釣果以上の楽しみがある
投げ釣りは全世代で楽しめる
ジギングやルアー釣りなどは体格や筋力の差が釣り方に影響するので、小さなお子様を連れてのファミリーフィッシングとして楽しむには少し難しいものがあります。
それと比較すると、投げ釣りは2m前後の短竿で楽しむ「チョイ投げ釣り」から、本格的な「遠投投げ釣り」まで、世代や性別による筋力の差などを埋めることのできるさまざまな釣り方があります。突き詰めれば細かなテクニックも数多くありますが、基本は仕掛けを投げてアタリを待つ初心者にも優しい釣りです。
投げ釣りは釣果が期待できる
撒き餌を撒いて魚を呼び込むウキ釣りや、回遊魚を狙うルアー釣りなどのような不確実な釣りではなく、底に居着いている魚を狙うために、実績のある場所さえ掴んでしまえばある程度安定して釣果が得られるのが投げ釣りの特徴です。代表格のキスやカレイの他に、時にはヒラメやマゴチなどの高級魚まで狙えるのが投げ釣りの魅力の一つです。
投げ釣りにはさまざまな喜びがある
家族で釣りを楽しむ喜びや好釣果の喜びの他にも、投げ釣りにはたくさんの喜びがあります。重めのオモリを豪快に飛ばして、はるか先で水しぶきが上がった時。狙い通りの場所に仕掛けが着水した時。仕掛けの動かし方が絶妙に決まって複数匹(一荷)の魚が揚がってきた時。なにより海に向かって思いっきりロッドを振る爽快さ。
このように、投げ釣り自体にいくつもの魅力があるため、どんどんハマってしまって家族を置き去りにしてしまうかもしれません。
投げ釣りの準備をしよう
釣り自体の経験はあるが、投げ釣りをこれから本格的に始めるという方向けにタックルの紹介をしていきます。釣りに必要な基本の道具(クーラーボックスやタモ、タックルボックスなど)はお持ちである前提で進めていきます。
投げ釣りの基本のタックル
一般的なタックルの組み方です。ターゲット魚によってロッドの長さやリール、ライン、ハリスなどの番手は変わってきますが、基本のキスやカレイを狙うのに充分な番手で紹介しています。
投げ釣り用竿
投げ竿は磯釣り竿のような長尺竿はほとんど使いません。オーソドックスな投げ竿ならば360cmから405cmほどのものが使いやすいようです。オモリ負荷が30号くらいのものならば充分でしょう。
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投げ釣り用リール
遠投競技の投げ釣りでない限り、リールは扱いの難しいベイトキャスティングリールよりもスピニングリールをおすすめします。番手は4000番以上で、5号のナイロンラインならば200mほど巻けるものを選びます。専用リールであればスプールにテーパーが付いており、ドラグ調整の無いものが主流で、番手表示も無い物が多いため、店頭スタッフまで相談することをおすすめします。
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投げ釣りの基本仕掛け
投げ釣りの基本仕掛けは1回のアプローチでアピール力があり、複数匹の魚が狙えるようにと、多岐針が使用されるのが普通です。手返し良く釣りたい方は3本針、大遠投で一気にキスなどを狙いたい方は7本針など、釣り方によって選びましょう。
投げ方一覧とテクニック
投げ釣りの代表的な投げ方
投げ方 |
使い処 |
コツ |
オーバースロー |
基本の遠投 |
体重移動を使う |
スリークォーター |
大遠投 |
体の回転を使う |
アンダースロー |
チョイ投げ |
手首のスナップ |
投げ方のコツ①オーバースロー
基本のオーバースローはロッドを振りかぶり、穂先を体の真後ろに持って行き、リールを真上に向けます。真っ直ぐロッドを振り下ろすと同時に、一歩前に出した足に後足をスライドさせ体重移動させながらラインをリリースします。オモリが頭を通過した瞬間にリリースするイメージです。胸を張って斜め45°に打ち出すと飛距離が出ます。ほぼロッドの性能だけで100mほどはカバーできる投げ方です。
投げ方のコツ②スリークォーター
オーバースロー投法がきちんとできるようになったらスリークォーターに挑戦してみましょう。ロッドを振りかぶるところまではオーバースローと同じですが、ここから上半身を捻じり、それを戻しつつラインリリース側の腕を突き出し、同時に尻手側の腕を体に引きつけます。剣道の袈裟懸けのようなイメージです。ロッドのスピードが最大限に引き出せれば200mほどまでカバーできる投法です。
投げ方のコツ③アンダースロー
これはチョイ投げ釣りでよく使う投法です。2m前後の短竿などで10~20m先の狙いどころにピンポイントで仕掛けを運ぶ投げ方です。竿先を斜め下に構え、ラインリリース側の手首のスナップでコントロールしながら投げます。「ゴミ箱にゴミを放り投げ入れる」イメージで投げると正確なスローができますよ。
投げ釣りにおける天秤の役割と種類
チョイ投げ釣りにしても遠投投げ釣りにしても、投げ釣りでは仕掛けを飛ばすために「天秤オモリ」を使います。使用目的によってチョイスが変わりますので、基本の天秤だけは押さえておきましょう。
天秤+オモリの役割
投げ釣りでは海底の狙った場所へ釣り針とエサを届ける必要があるので、重いオモリを仕掛けに使います。しかし、ただ投げるだけではオモリより下のハリス部分が道糸に絡んでしまって仕掛けが機能しません。そこで「天秤」と呼ばれるL字の針金を使います。オモリとハリスが一直線にならないようにセットすることで、「仕掛けを絡ませずに狙い場所まで」届けるのが「天秤」の役割です。
形状別には大きく2種類
天秤には大きく分けて、ステンレス線をL字型に組んだL字型天秤と、オレンジやグリーンの三角キャップのはまった直線状のジェット天秤と呼ばれている2つの天秤があります。どちらも糸絡みを少なくし、飛距離が出るように工夫がされていますが、少しずつ使い勝手が違います。
機能別には大きく3種類
天秤の機能は大きく分けて3つに分けられます。釣り場や釣り方によって天秤の種類は選べますが、最近ではオールマイティーに使えるように改良されています。
遠投特化型天秤
天秤にはそれぞれ特徴があります。一つは「遠投特化型」天秤。これはL字固定型のものが投げやすく、また空気抵抗を抑えるためにアームの短いものを選びます。
アタリ特化型天秤
次が「アタリ特化型」天秤です。これは天秤の軸線にオモリが取り付けられていて、L字の頂点から頂点へとラインを通し、天秤全体がラインをスライドする仕掛けになっています。魚が掛かるとラインからロッドにダイレクトにアタリが伝わり、針掛かりを助けてくれます。一般的には「半遊動式」などと呼ばれています。
トラブル回避型天秤
最後が「トラブル回避型」天秤です。天秤を使った投げ釣りで一番多いトラブルが「根掛かり」です。これを回避するために障害物をよけやすく作られたのがジェット天秤です。ラインを巻くと天秤が一直線になり、また先に付いたフィンで浮き上がりを良くし、水中を泳がせることができます。つまり何か障害物をコツンと感じた時に、ロッドを強めに煽るだけで根掛かりが回避できるシステムになっているということです。
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天秤のタイプとメリット・デメリット
天秤のタイプ |
メリット |
デメリット |
L字固定型 |
遠投がしやすい |
アタリが取りにくい |
L字遊動型 |
アタリが取りやすい |
遠投がしにくい |
ジェット天秤 |
根掛かりしにくい |
糸絡みしやすい |
これらの複合型や新機能天秤も
ここで紹介・解説した天秤もすでにかなりの改良がされていて、飛びと根掛かり回避にすぐれた天秤など、複合型とも言えるタイプのものも販売されています。また「スパイク鉛」と呼ばれる激流の中でも転がらない工夫のされたオモリ付き天秤なども開発されています。購入の際は実際に店頭で確認し、店頭スタッフの意見を聞くことをおすすめします。
大漁を狙う投げ釣りのコツ
ここからは釣り方の紹介です。どんな釣りにもコツはありますが、投げ釣りは「多岐針」を使う釣りですので、他の釣りと一味違うコツがあります。
釣れるポイントを絞る
最近の釣りは情報戦の色合いが強く、釣れるポイントを複数個所は持っていないと、なかなか釣果には恵まれません。新聞雑誌の情報欄やインターネットでの釣果情報などを必ずチェックするようにしましょう。最も有力な情報が得られるのが、釣り場近くの釣具屋です。エサや仕掛けを購入する際には、店頭スタッフに声をかけて釣果情報や釣り方の相談などもしてみましょう。
カケアガリを狙う
キスやカレイなど投げ釣りのターゲットは海底近くの起伏の中に固まっていることが多く、うまく起伏の中を通すと釣果に繋がります。特に「カケアガリ」と呼ばれる海底の丘の部分には良く集まります。カケアガリは沖から手前に向かい徐々に高くなっていきますが、ここは潮がゆるみ甲殻類が多くいるので、斜面からイソメやゴカイなどが顔を出すキスやカレイにとっては絶好の餌場になります。オモリを引きずってカケアガリを感じたら、そこを集中的に狙ってみましょう。
仕掛けを毎回確認する
釣果を上げるためには道具がきちんとしていなくてはいけません。投げ釣りの仕掛けは常に海底を引きずられています。針先などが岩や砂に擦れて甘くなるのも早いので、常に確認をしましょう。エサの付け替えのたびにチェックするのがおすすめです。甘くなった針を変えた途端に効果が出て、喰いが立つことはよくあります。
エサは常に新鮮なものを状況に合わせて使う
投げ釣りの場合、エサの付け方は一般的に「通し刺し」にします。イソメやゴカイの頭(口)から針先を入れ、針先を胴体から出す付け方です。首筋にちょんと引っ掛けるチョン掛けでは投げ釣りの場合身切れしてしまうので、おすすめしません。ただし、喰い渋りの時にはアピールするために通し刺しと組み合わせて「房掛け」にしたり、臭いを出すために縫い刺しにしたり、いろいろと工夫してみましょう。また、キスやカレイは新鮮なエサを好むので、常にエサは新しいものに付け替えましょう。
動かし方を変える
エサや仕掛けが完璧でも喰い渋ることはあります。もちろん時合(魚の活性が上がる時間帯)ではないのかもしれませんが、そんな時は仕掛けの動かし方(サビキ方)を工夫してみましょう。カケアガリなどはしばらく静止させて待てばいいのですが、平坦な場所ではロッドのしなりを利用して強めにサビいて停止させたり、思い切ってオモリが浮くほどしゃくって落としたり、もちろんズル曳きもアリです。いろいろな動かし方を試してみましょう。
追い食いを狙う
キス釣りなどで釣果を上げるには、多点掛けが一番手っ取り早い方法です。投げ釣り初心者にありがちな失敗は、多岐針の一番下の針に一匹喰いついた魚を釣り上げてしまうことです。これは往々にして「サビキスピードの速すぎ」で起こります。魚は他の魚が釣り針に掛かってジタバタしていると、「あ、エサを食べてる」と自分も近くのエサを探します。そのため、一匹掛かったのが分かったら、ゆっくりとリールを巻いていきましょう。100m巻くのに約10分が目安になります。
ゆっくり巻く裏ワザ
リールをゆっくり巻く時にハンドルでリーリングするのでなく、空いた手でスプールを直接巻くと追い食いしやすいスピードでラインの巻き取りができます。
基本の合わせ方
投げ釣りの合わせ方は、基本的には「向こう合わせ」になります。置き竿にククンとアタリが出たら、天秤の重みですでに針掛かりしているはずです。引きずっている時にクンとアタリが出たらそっとロッドを立てるくらいで合わせは充分です。
魚種別仕掛け表
基本の仕掛け紹介
対象魚 |
針 |
ハリス |
天秤 |
備考 |
ハゼ |
袖針5号2本 |
0.8号 |
ハゼ小型 |
秋~冬が旬 |
キス |
キス針6号5本前後 |
0.8号 |
L字固定 |
初夏~秋が旬 |
カレイ |
流線針12号前後2本 |
3~4号 |
ジェット天秤 |
夏~冬が旬 |
その他根魚 |
丸セイゴ10号2本 |
1~2号 |
胴付き |
秋~春が旬 |
基本の仕掛けは仕掛け表の通りですが、これはあくまで一般的なサイズを釣るためのもので、個体の大小で針やハリスの号数は上下させましょう。また旬を書き入れておきましたが、これは食べ方(例えばカレイは煮付けが冬・刺身が夏)などでも若干変動がありますので、一概には言えません。
針数は「手返し良く」「トラブルが少なく」の針数です。投げ釣りの腕が上がってきたら増やすのも良いでしょう。
チョイ投げ釣りの仕掛け
投げ釣りの中にはお手軽な「チョイ投げ釣り」があります。遠投投げ釣りのレンジが100~150mなのに対して、50m前後を探るチョイ投げ釣りは、その名の通り初心者やお子様でもちょいと釣れる楽しい釣りです。チョイ投げ釣りの紹介もしておきましょう。
おすすめのチョイ投げ釣りセット
オーソドックスでお手軽なチョイ投げ釣りのセットです。ロッドは1.8mの振り出し竿。リールは3号のナイロンラインが100m巻かれた小型スピニング。これに天秤や2本針の仕掛け、魚掴み、ハサミなどがすべてセットされています。後はエサだけあれば購入即釣行という優れものです。しかも仕掛けのセッティング見取り図まで入っているので、入門編にはもってこいのセットです。
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中通し鉛を使った仕掛けでお手軽に
「中通し鉛」は中空構造となっているためラインが中を通り、意図的に留めない限りラインが自由にスライドします。スライド時の摩擦でラインに傷が付くことがあって遠投には向きませんが、チョイ投げやぶっこみ釣りをするには使いやすいアイテムです。ラインをフリーで出せば波の力でエサが漂い、根魚以外の魚が釣れることもあります。アタリもオモリを介さないために出やすく、ライン切れとライン絡みのリスクはありますが、お手軽ではあります。
チョイ投げにあると便利な道具類
最低限小型のもので結構ですので、クーラーボックスは用意しましょう。また、堤防や釣り公園など一段高くなった場所での釣り方が多いチョイ投げ釣りなので、ロープ付きの水汲みバケツがあると便利です。また、小さなお子様連れであれば、体に合ったライフジャケットを装着しましょう。
投げ釣りは周囲の安全を確保してから
チョイ投げ釣りでも遠投投げ釣りでも同様に、投げ釣りはとにかく周囲の安全確認をしながら釣りをしましょう。チョイ投げ釣りの場合、堤防や釣り公園など人出の多い場所での釣りになることも多いので、隣や後に人が居ないことを確認してから投げます。また、遠投投げ釣りでは長いロッドで重いオモリを使うことが多いので、接触などがあると軽い事故では済まない場合も多々あります。お互いがケガの無いように気を付けましょう。
豪快な投げ釣りの魅力を体感しましょう!
いろいろな釣り方がある中で、豪快さナンバーワンといえばやはり「遠投投げ釣り」です。しかし、魅力的な釣りであるがために敷居が高いイメージもあります。まずはタックルと仕掛けを準備してフィールドに立ちましょう。そしてさまざまな魚をゲットしてください。きっと釣果以上の楽しみが見つけられ、この釣りにハマっていくと思います。